DIYは個人の趣味の範囲から賃貸住宅の常識をも打ち破るようなガイドラインが平成26年に国土交通省から発表されました。
貸主と借主も双方ウイン・ウインの関係を保て、最近トレンドになりつつある、借主負担DIY型について老朽化した賃貸物件を所有している方の参考になればと解説します。
賃貸借の借主負担DIY型とは
目次
従来の賃貸借の形態の種類に新しく借主負担型DIY型が加わりました。
- 賃貸一般型
- 事業者借上型
- 借主負担DIY型
まずは双方のメリットから列記します。
貸主のメリット
- 自己負担(現状復帰)や手間をかけずに貸せる
- 長期に借りてもらえる
- 退去時に、貸出時よりも設備等の価値が上がっている可能性がある。
- 若い方が借主の場合にSNSで拡散して入居募集の手助けになる。
このガイドラインの趣旨は地方の老朽化した空き家になった家屋を賃貸に再利用できないかという点です。
ただ、賃貸に利用しようと思えばリフォームに費用がかかります。初めての経験で大家さんになられる方は、ずっと空き家のままだったらどうしようと賃貸にリスクを負いません。
その点、DIY型ですと双方の取り決めさえできればほぼノーリスクです。
また、借り手も自分の資金を投入するので長く住みます。ここも大きな点です。
借主のメリット
- 持ち家のように自分好みのデザインができる
- 安い賃料で借りれる
- 退去時に原状回復費用を取られない。
借主も自分好みのデザインというところが魅力です。そして、リフォームの費用が加算されないので安価で借りれます。まさに双方良しの関係を築けます。
このガイドラインの発表は日本全国で空き家が増えているという現状があります。ここでいう空き家とは賃貸の空き家と、持ち家の空き家をさします。
国が活用したいのは持ち家の空き家の方です。
全国の空き家の総数は平成20年のデータでも760万戸あり、そのうち個人住宅が270万戸もあります。
適切な管理が行わない住宅は防犯や衛生面で地域の大きな問題になっています。
それらを解消するためには従来の賃貸の在り方を根本的に変える必要性があったため、国土交通省がガイドラインを策定し、空き家を有効利用し、なおかつ個人住宅の賃貸流通を促した。
これによって、地方での定住促進やUIJターンの受け皿としての空き家の活用が求められています。
貸主が修繕を行わず現状有姿のまま賃貸し(賃料を相場より安く設定)、借主が自費で修繕やDIYを行う借主負担型の賃貸借契約の指針を新たに策定
ここで国土交通省のガイドブックから借主、貸主の立場からの考え方や手順を解説します。
DIY型賃貸借の借主の流れ
- 不動産会社店頭や不動産情報サイトなどでDIY工事可能な賃貸物件を探す
- 貸主や管理会社に実施可能なDIY工事を確認
- 物件の内覧、具体的なDIY工事の検討、必要に応じて図面・イメージ写真等の準備
- DIY工事内容や原状回復などの取り決め事項について貸主と協議
- 賃貸契約書の取り交わし
- 希望するDIY工事の内容を記載した申請書を提出し、貸主から承諾書をもらう
- 合意書を交わす
- 施工方法について専門業者への相談のほか、書籍やインターネットで情報収集
- DIY工事の立会い確認や写真保存
- ホームセンター等で材料を揃え、DIY工事を実施し、写真保存
必要の応じてDIY工事前の通知、DIY工事中のクレーム対応
- DIY工事部分の管理・修繕の実施
- DIY工事は部分は原状回復なしで明渡し
- 立会い確認
- DIY工事部分が通常使用できる状態にない場合は補修
必要に応じてDIY工事部分の費用清算(受け取り)を行う
DIY型賃貸借の貸主の流れ
- DIY工事可能として入居者を募集
- 必要な情報を提供
- DIY工事内容や原状回復などの取り決め事項について借主と協議
必要に応じて管理会社に相談
- 賃貸借契約書の取り交わし
- 借主が希望するDIY工事の内容が記載された申請書に対し、承諾書を交付
- 合意書の取り交わし
- 立会い確認
- DIY工事の予定箇所を写真に撮るなどして保存
- DIY工事が申請書通りの内容かどうかチェック
- DIY工事部分以外の管理・修繕の実施(一般的な賃貸借契約と同様)
借主が入居中にDIY工事を希望した場合はSTEP1へ
- 立会い確認
以上がDIY型賃貸での借主側と貸主側の流れですが、トラブルになりやすい点をまとめてみます。
DIY型賃貸借の取り決め事項のまとめ
借主(または借主が依頼した施工業者)が改修を行います。貸主の所有物に手を加えますのでトラブルになりやすいポイントを列記します。
- 所有権について
- 明渡し時の原状復帰について
- 清算について
- 施工について
- 管理・修繕について
所有権について
貸主の所有物に物を付けたり、一部を改修するので、工事部分の所有権がどちらにあるのかを当事者同士で決めること。
ただし、改修によって住宅と一体になるような工事部分(壁を塗装した場合)は貸主が所有権を持ちます。
明渡し時の原状回復について
工事部分について、明渡し時に残置するのか撤去するのかを取り決める必要があります。
残置する場合は、原状回復義務は無くなります。ただ、通常損耗や経年劣化以外の事由による工事部分の補修が必要になっている場合は事前に協議が必要です。
借主が設置する物が多くなりがちなので事前に細かく取り決めをしておくのが望ましくトラブルを避ける秘訣です。
清算について
借主負担でDIY工事を行った場合には、貸主に費用請求できる場合もありますが、DIY型賃貸借では、原状回復を免除したり、契約期間中の家賃を安く設定したりする代わりに費用請求を放棄します。
費用清算についてもあらかじめ定めておくことです。
また、清算を行う契約の場合は、残存価値の算定方法についても貸主、借主で合意しておくのがトラブルになりにくい方法です。
施工について
DIY工事の際に本体や第三者に損害を与えた場合の責任の所在を明確にしておく必要があります。
DIY工事の際には工事前後の立会い、図面があれば確認を行うことです。
管理・修繕について
入居期間中の管理・修繕を誰が行うかを明確にする必要があります。工事実施者である借主が工事部分の管理・修繕を行うのが妥当です。
以上で貸主と借主双方での決めておかなければならないポイントを列記しましたが、詳しくは国土交通省のHPに契約書式例もありますので参考にしてください。
参考 DIY型賃貸借に関する契約書式例とガイドブックについて国土交通省持ち家の空き家対策のDIY賃貸ですが、この方法は民間賃貸でも老朽化した物件をお持ちのオーナー様を試してみる価値はあると思います。
実際に何年も前からUR賃貸でも採用され人気があります。民間マンションや戸建てでも始まっています。検討して勉強してみることをお勧めします。
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